武蔵野美術大学 造形学部卒業制作 大学院修了制作 優秀作品展

展覧会について

装飾的ガラス製品「氷コップ」の成立ち
ー日本近代における実用品としての氷コップの実態を探るー

上田 結 芸術文化学科[造形研究コース]

論文

私は、江戸時代の和ガラスの展覧会で、職人の手仕事によるガラス器に魅了された。日本のガラス工芸に関して調べていくうちに、明治時代以降の欧米化・機械化の中で、従来の食器には見られなかった多種多様な装飾が施された「氷コップ」という実用品が作られるようになったことを知り興味を持った。 本論文では、ガラス技術の発達と氷水(かき氷)の隆盛という社会的背景に注目しながら、「氷コップ」を通して日本近代のガラス工芸の成り立ちを辿ってみた。

担当教員:田村 裕
明治以降、欧米技法を取り入れつつも和様化し、様々な文様と形の製品を生み出した氷コップの成立から衰退までの軌跡を調べた論文。生活実用品であるがゆえに先行研究や記録資料が極めて少ない中で歴史を掘り起こし、生産技術と庶民生活の近代化を背景に、デザインがどのように変化し多様化していったのか、なぜ和風の文様が活かされたのかが、丁寧に論じられている。メーカー取材のほか、文献資料を丹念に調べあげ、氷コップの実態に徹底的に迫ろうとしている研究姿勢を高く評価した。

Photo: Akitaba Hamasaki, Tomokazu Nakamura, Yasuo Saji