武蔵野美術大学 造形学部卒業制作 大学院修了制作 優秀作品展

展覧会について

 

郷 正助 油絵学科[油絵専攻]

 

さよならとか、あきらめから出る溜息も、どうせなら、鮮やかにつこうと思いました。何かと何かが出会うとき、始めて互いが、光を得ることが出来るような感じで。

担当教員:丸山 直文
画布の変わりに木枠に半透明なビニールテープを張り、壁に掛けられた一見抽象絵画を彷彿とさせる作品は、高尚な抽象絵画といった一般的なイメージを破壊させ、絵画とは何かを問うているようにもみえる。しかし、そのようなジェスチャーだけを見れば、1960年代末から1970年代にかけてフランスで起ったシュポール・シュルファースなどの作品と何ら変わらないであろう。  しかし彼の作品をよく見ると、シュポール・シュルファースのように絵画の定義を問うような理知的な表現が試みられているのかと言えば、そうではない。木枠に透過性のあるビニールという表現の有り様だけを考えればダニエル・ドゥズーズの作品を思いおこす事が出来るが、ドゥズーズのような支持体を支える木枠や展示の在りようなど、より細やかな絵画の構造まで彼の作品は言及してはいない。  彼の作品の軽やかさや美しさは「絵画とは何か?」といったアポリアを扱うのではなく、まるで一つの絵の具を選ぶ様にテープという素材を選び、自己の表現と結びつけている点にある。だからこそ彼の作品は、ラディカルであり現代性を持ち得ているのだ。

Photo: Akitaba Hamasaki, Tomokazu Nakamura, Yasuo Saji