武蔵野美術大学 造形学部卒業制作 大学院修了制作 優秀作品展

展覧会について

対者

長谷川 維男 油絵学科[油絵専攻]

 

向かい合う二つの機械は対面するように人の姿が描かれていて、間に渡されたロープは、二者間で起こる様々な干渉を現している。 一方の機械で作り出されたエネルギーは、10本のロープを伝わって、 もう一方に吊り下げられた鉄パイプを様々な方法で鳴り響かせる。 丸太、石、鉄をぶつける音。鎖でする音。それらの音を止める音…… 一つの物体が干渉するものの差異によって無限に音を出す。 同じように人間も、周りの刺激に応じて様々に反応する。 その変化は無限のように見える。 しかし面白いのは、物も人間も関係性によって無限に変化するにも関わらず、根底に変わらぬ性質があることだ。 鉄を何で叩いても木のようには鳴らないし、木も鉄のようには鳴らない。人にも変わりえないものがある。 つまり、個は無限性を持ちながら、有限性の中にある。 『対者』との関係性によって様々に湧き起こる、個の一が含む無限。

担当教員:赤塚 祐二
壁に人体図が描かれ、部屋の中央には二つの大きな箱がある。 片方の木製の箱にはドリルで穴があけられ、なかに付けられた電球によって人体図と同じ形の光が漏れる。 もう片方の箱は黒く塗られ、そのなかにはモーターが取り付けてある。 モーターが動くとひもが引かれ、最後には木箱の方に付けられた金色のマネキンの足が金属製の大きな筒を蹴り、カーンと澄んだ音を出す。 架空の広場で意図的に対比された二つの箱が、機械的に作用と反作用を繰り返す。 社会と表現者の関係を、制作者自身が愛する素材感にあふれた材料でアイロニカルに捉えた秀作である。

Photo: Akitaba Hamasaki, Tomokazu Nakamura, Yasuo Saji