武蔵野美術大学 造形学部卒業制作 大学院修了制作 優秀作品展

展覧会について

風と大地の踊り(右)

山本 裕子 油絵学科[油絵専攻]

平面/木パネル、綿布、白亜地、油絵具/テンペラ/3240×2606

目に見えないもの達は渦巻くように私達の周りに存在しています。 その不確かなものを形にして視覚的に捉えられたらと考えています。 風はどこまでも遠くへ行く 力強い命のエネルギーは風に乗って大地を覆う 何もかも自由に解放された時、どんな音がして、どんな事がおこるだろうか。 相反するふたつのものが一つになる時、世界は成り立つといったアジアの思想に共感し、着目しています。

担当教員:樺山 祐和
当初からアジアの宗教的文物に強い興味を持っていた作者だが、それらの濃密なイメージを画面に取り入れながら、すべての物が渦を巻くように力強く流動している。特に布のつくるダイナミックな動きが画面に大きなうねりと浮遊感を生じさせ見る者の視線を動かす。動きは作者の主題である流転、輪廻といった考えを体現しているが、呪術的な文様で覆われた様々な色の布と自画像だと思われる人間や動物は、厳かに楽しく祝祭の乱舞のように、いつしか天空の原初の光へと還るようだ。輝きを抑制し内に秘めた力を感じさせる豊かな色彩にこそ作者の宗教的感情が表出していると思うが、それが粘り強い描き込みと相まって画面に独特の充実感を生み出している。

Photo: Akitaba Hamasaki, Tomokazu Nakamura, Yasuo Saji