鏡と布
茂木 美里 彫刻学科
立体/楠、木彫/1950×1060×1400
鏡の中に広がるあちら側の世界。目には見えるけど、触れることはできない。 本当はあるのか、ないのか。木を彫ることで実体を与え、少しでも近づこうとする。
担当教員:三沢 厚彦
茂木の作品「鏡と布」は 鏡に映る室内と、それに掛けられた布が木彫に油彩という手法で表現されている。実像世界としてのフレームや布が荒々しく、リアルな木の質感を讃えているのに対し、虚像の世界である室内が粘っこい質感の起伏と、それに対応するかの色調によって表現されている。それは、ただ単に鏡の機能である虚像世界ではなく異世界への入り口としての印象を持つ事ができる。そして、近寄るにつれ 現実と虚像の境界が消失する。クローネンバーグの「ビデオドローム」のように、虚像が実体を持ち増幅され、意思を持って実像世界をも食い殺してしまうのではないか!と。もうすでに彼女にとって、鏡に映された世界は虚像ではなく、実像以上に強い意思を持ちはじめているのだ。