武蔵野美術大学 造形学部卒業制作 大学院修了制作 優秀作品展

展覧会について

あそびドロップス 子どもの遊び-変化・発見・連続
-プレーリーダーひるの遊び場観察・体験日誌より

蛭子井 里江 視覚伝達デザイン学科



遊びの魅力を伝え、遊びの大切さを感じてもらうための本と映像をつくりました。実際に子どもと遊び、観察をする中で、「子どもは変化と発見と連続とその過程が楽しいから遊ぶのだ」と気づき、それらの瞬間を撮影した写真と、そのとき発せられたことばを並べました。大人は見過ごしがちだが、子どもにとっては重要な多種多様な気づきが自由な遊びの中には無限に存在します。私たち大人がそれらに目を向けることで、子どもがのびのびと遊べる環境が守られることを願って制作しました。

担当教員:齋藤 啓子
さいたま市内の別所沼プレーパークを拠点に地元小平から大地震の被災地まで、11か所の遊び場で、4月からそして現在も、蛭子井さんはプレイリーダーとして子どもたちと付き合っている。子どもからは「ヒル」と呼ばれている。「ヒル、みて~!」「ヒル、きて~!」と、子どもたちはたくさんのメッセージを彼女に投げかける。そこには輝くような遊びの表現がある。この「かけがえのない子どもの時間と空間をなんとか守らなければ」と、彼女の目的には全くブレがない。 子どもの遊びをねばり強く観察し、時間の経過、季節、天気、自然の素材、子どもの会話とふるまいなどを表にして分析し、見つけた3つのキーワード「変化」「発見」「連続」をタテ軸に、9つのふるまいの段階「みつける」「さわる」「みる・きく」「つくる」「なりきる」「つける」「おどろかせる」「さそう」「こわす」を横軸にする。遊びは、繰り返し味わってなめつくすドロップのようだ。彼女はそう気づいた。 子どもとの会話に誠実に、遊びの様態を冷静に表現する、その記述にフィクションはない。圧倒的なのは子どもと彼女の距離感の近さだ。子どもの遊びの環境を守りつくろうとする人たちにとって、この冊子と映像は力強い味方になると確信している。

Photo: Akitaba Hamasaki, Tomokazu Nakamura, Yasuo Saji