INDIVIDUAL RESTORATION
青山 かほり、坂倉 圭一 空間演出デザイン学科
インスタレーション
これはファッションショーではなく、空間を介したパフォーマンスである。 ファッションとはただ衣服ではなく、生き様である。 心模様やその表情、背景やシチュエーションである。 リアリティのもつ説得力は、個々の美と存在感を生み、 それは束の間のはかなさを生んだ。
担当教員:パトリック・ライアン
ファッションの黄昏、人生の曙。
いままでファッションショーでこのように泣いたことはない。坂倉圭一、青山かほりはパーフェクトなデュオだったと思う。彼らのショーを観ながら、私は感動して涙した。三度観たがその度に。
彼らのコラボレーションには魔法があった。感動的なイメージの連続はゼロのオーケストラ演奏を観ているようだった。夢の中にいるようなショーのセットの中で服はゼロとなり、私たちが生きるこの時代の美、暴力、情熱が渦巻く夢が謙虚な礼節を持って表現されていた。
伝説的な監督Andrzej Zulawski(the important thing is to love)や、大島渚(愛のコリーダ)、リドリー・スコット(ブラックホーク・ダウン)の世界を思い起こさせるものがあった。
服は無残で何もなく、襤褸(ぼろ)だった。それがこの作品のポイントであり、ファッションであふれている今の時代に生きている私の中で、この悲惨さは大きなステートメントとなった。
ファッションの進化とスタンダード。そしてわたしたちはどこに向かうのか?
夕暮れに染まるセットの中で私は何かが終章を迎えているのを感じた。
人生の黄昏か?
時代終焉か?
大衆文化と消費至上の中におけるファッションの在り方の変化の兆しか?
次なる価値観、アートファッションの曙。
『黄昏』の後に必ず来る『曙』を感じさせる作品として、私に密やかな予感を与えてくれた。