SOCKS
金澤 悠夏 基礎デザイン学科
立体、写真/布、紙/ミシン縫い、刺繍、プリント/足型
例えば作品中のKOKUBAN SOCKSは、小学生用の靴下にすべり止めがついている事から黒板消しに見立てたものだ。もしこれを履く状況があったら、床を綺麗にしようと足を擦らせるかもしれない。この場合、黒板消しにまつわる記憶、感覚が現在の小学生から大人の年代まで通じる事だろう。そのため意外なものを靴下とリンクさせながらも、身近に感じられるはずだ。 このように、どんな人がどのような状況でそれを履くか、と状況を考えて靴下を制作した。
担当教員:深澤 直人
ソックスというテーマで卒業制作をやってみたいといわれたときには、既に面白そうなテーマであること感じていたた。
最初に黒板消しをモチーフにした靴下を持って来て、本人は「床を拭く」と「黒板を拭く」ということを結びつけて考えていたようだが、
そのラフモデルを見たときには、ただ単純な二つの似た行為の繋がりを具体化したのものだけではない、何か不思議な魅力の要素を含んでいたことに作者も私も来気付いてきた。そのえも言われぬ不思議な感覚は「ソックス」という具体が持つ要素だった。作者には、ただ単に何かのかたちや要素を靴下のかたちに置き換えるのでは面白くない、ということを繰り返し伝えた。そのうちに本人は靴下と日常の見逃してしまいそうな接点を見つけようとしはじめた。靴下の穴とか、階段の先を上がる人の足の裏や細部のようなことである。誰もがいわれてみれば納得できるような細かな気付きがこの「ソックス」のプロジェクトには詰まっている。気付いていることを自覚することは易しくない。考え込まず、まずは手を動かしてつくってみてから気付く、その繰り返しが靴下というメディアを理解する大きなきっかけになっている。考えるのではない、日頃感じとっていたことがなんだったかを反芻するのだ。
この制作はその努力の成果だと思う。つくってみることの自分を作品から離し客観視できるようになる。その体験がこの優秀な結果を生んだと言って間違いない。