武蔵野美術大学 造形学部卒業制作 大学院修了制作 優秀作品展

展覧会について

輪廻転生のデザイン
―社会と人を蘇らせる、変容、生成、再創造の器として

内田 麻美子 芸術文化学科

論文

誰かが振り返ることもなく、こんなにも単調で確固たる生活を手に入れた私たち現代人は、この、「安逸な安定感」と引き換えに、唯一無二であるはずの自らの身体、そこに眠っているはずの無限の感覚をいつしか手放してしまったのではないだろうか。  刻々と失われゆく「生」の実感を、私たちはいまいちどとり戻したい、心の奥底でそう祈っている。  社会を鋭く見据えるデザイナーの意志が貫かれた「デザイン」には、人々の停止した感覚を揺り起すほどの「力」がある。本論では、倉俣史朗、吉岡徳仁、二名のものづくりの視点に立ち、彼らの「現代」への視点を拾うことで、これからの「デザイン」の道を見いだしていく。

担当教員:新見 隆
現代のものづくりと、人間の環境に対して、徹底した、深い疑義を唱えながら、その救済の希望を、新しい、デザインの概念の読み直しに探ろうとする、果敢な批評的論考。ポストモダンを、運動の持っていた社会環境的意義や、日本的な読みの可能性としての「廃墟論」から説き起こし、文明批評的現象とも言い得る、倉俣史朗と、現在、物質への想像力を喚起し人間を覚醒させようとする、吉岡徳仁を論じて、透明な情熱をたたえた、清冽な文体に、打たれる。

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