光景Ⅰ
光の行方Ⅰ
小野 有美子 油絵コース
【光景Ⅰ】平面/カンヴァス、油絵具/2053×1920
【光の行方Ⅰ】平面/綿布、パネル、油絵具/2385×1855
「本当に大切にしなければならないものは何なのか」という問いと、「切り捨てられがちな、些細なものをないがしろにしたくない」という思いを持って日常に目を向けた。 光の先にあるものは大したものではない。 闇の中の小さな雑草など目立たない。 けれど、それこそがとても大切である。 そういう所に辿り着きたかった。
担当教員:斎藤 國靖
闇のなかにコントラスト強く斜光が射し込み、聖なる者、あるいはそのドラマが描出される西洋古典絵画は、カラヴァッジョ以来の伝統的な表現である。小野さんの「光の行方」もまた廃小屋の闇のなかに、強い斜光が射し込む絵画である。しかし、その“光の行方”には、聖なるものもドラマもなく、空虚だけである。その空虚を、あたかも聖なるものと等価の如く情熱を込めて描出している。そこに現代におけるアナーキな感情をよみとることもできるが、光と闇の幾何学的な構成や確かな油絵の具の手応えが、絵画への信頼を証明している。