muddy river(左)
fragment#3(中央)
fragment#4(右)
風早 小雪 版画コース
平面/モンパルキャンソン、雁皮紙、銅板/メゾチント、ドライポイント、雁皮刷り/1000×4000(1点)、1000×1000(2点)
時間や記憶を留めておく事はできない。映像や写真は記憶を代行する一つの手段であるが、現実そのものを映すのではなく、現実を切り取り、視覚化する事によって「現実のイメージ」を映し出すものである。果てしない時の流れの中で、人間が存在するのはほんの一瞬であり、その記憶も時間も、やがて世界と同化し、消えてゆく。本作品は映像を静止画に変換し、レイヤーを重ねることによって作られたイメージを元に、銅版画のドライポイントで表現した。それはイメージや時間を再構成するとともに、リアルな感覚を具現化し、人間の記憶という本質的な部分への回帰の提示である。
担当教員:高浜 利也
自ら撮影した映像やデジタル写真から抽出した風景をベースに、手わざによる銅版画技巧を駆使しながら、大画面に展開させた秀作。通常サイズからの逸脱を図ることで工芸的洗練の呪縛から逃れ、表現としての構造的な強度の獲得に成功している。一方、デジタルとアナログのはざまで揺れ動くイメージのズレや重なり、滲みといった作者の網膜上の出来事や息遣いを、冷徹、かつ愚直に具現化した漆黒の絵肌には、版画のメチエを超えた豊かな絵画空間が無限に拡がっている。