ラファエロ作《変容》の宙に浮かぶキリスト像の
成立に関する問題
三浦 香里 造形理論・美術史コース
論文
16世紀イタリアで活躍したラファエロ・サンツィオは、ルネサンス期の代表的な画家としてわずか37年の生涯のうちに多数の作品を残し、後世の多くの画家に影響を与えた。《変容》はラファエロの傑作として名高い作品の一つであるが、工房の関与や成立過程などに関して今なお様々な議論がなされている作品でもある。本論文ではラファエロ作《変容》において、ラファエロはキリスト像を宙に浮かばせる発想をどこから取り入れたのか?という問題を中心に取り上げる。
担当教員:北澤 洋子
盛期ルネサンスの画家ラファエロによる絶筆《変容》は、形の特性としてはルネサンスとバロックの過渡期に位置付けられる。一方、キリスト自身が光輝くこの特別な奇跡場面は中世を通して東方ビザンティン美術で描き継がれてきた。修士課程における複数の研究テーマの集約(ないし切り口)として、本作品を位置付けるに至った経緯をまず高く評価する。本人に備わっている冷静な鑑識眼によって比較作品を選定し、併せて図像学の方法で調べあげた結果、師匠ぺルジーノ工房における問題など具体的な複数の問題が、解明され、また今後の研究課題として発展的に提示されている。