武蔵野美術大学 造形学部卒業制作 大学院修了制作 優秀作品展

展覧会について

平仮名の活字化への考察

藤井 啓史 視覚伝達デザインコース

論文

元来漢字平仮名交じり文は連綿体で書かれ、平仮名は文字毎に縦の長さが違う文字だった。元々文字毎に大きさの違った平仮名が、近代活字以降どのようにして正方形の同じサイズのボディの中に設計されるようになったのか。その理由を江戸時代の印刷物の平仮名を分析し、変化を検証することで考察していく。すべての文字が正方形の中に設計されている現在の日本語のタイポグラフィのルーツを探ることが本研究の目的である。

担当教員:新島 実
プロポーションの異なる平仮名が、あるいは連綿体で書かれていた平仮名がどのようにして和文活字の正方形の中に一文字ずつ設計されるようになったのか。この研究は和文タイポグラフィデザインの研究から抜け落ちていた部分に焦点を当てたものである。藤井君はキリシタン版から明治初期の本木活字に至るまでの印刷物を概観しながら、平仮名の正方形化への字体の変化を検証している。和文タイポグラフィデザインにとって平仮名の存在は大変に重要な要素であり、他の漢字圏の国々のタイポグラフィデザインに対する考え方との間に決定的な差を生み出しているだけに、この研究の意味は限りなく大きい。

Photo: Akitaba Hamasaki, Tomokazu Nakamura, Yasuo Saji