平面
木製パネル、岩絵具、水干絵具、高知麻紙
2000×4200
冷たい川底を流れる藻。その流れの中に、
潜むように咲く小さな白い花。
その藻は泥の中に根を張り、大きくうごめく。
今にも喪失しそうで、しかし確かにそこに在る。
ものすごく弱いものの中に、
何かを保とうとする強さがある。
底の果ての先は、いったいどこにあるのだろうか。
自身の奥底に流れる「何者かの塊り」に辿りつくために、
その泥を掻き出すように、川底の姿に投影し、描き続ける。
担当教員:尾長 良範
作品を見たときA•タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」の冒頭のシーンを思い出した。水草が水中に漂う映像は、やがて始まるイメージと現実が絡み合った物語を暗示するようであった。佐藤の作品は、一見では特に際だったものには見えない。しかし注意深く観察して行くと幻影と存在とのなかで凝視し自己に向き合い表現を手探りしている様子をうかがうことができる。技術や特異な主題から表現の強さを求める作家が多い時代ではあるが、素朴に物と向き合い、自己と向き合い、造ることの可能性をこの作品から感じることができる。