本
紙
297×210
朝鮮時代の韓国画は貴族文化という特定の勢力の好みにより、中国画の影響を大きく受けて描かれたのに対し、民画は大衆の観点に合わせるために既存の絵画様式を再解釈し新たな表現を生み出した。特に民画の寓意的な意味伝達の構造は東アジアの絵画史における独自のアイデンティティを確立するのである。ゆえに、私は韓国の絵画史における独自の表現様式を持つ民画の意味構造や表現の分析を通し、デザインにおける視覚表現の新たな可能性を考察するものである。
担当教員:新島 実
視覚表現の意味生成のメカニズムを読み解こうとした、意欲的な研究である。題材は韓国の民画「文房図」である。論文の構成は、民画の成立過程を中国の絵画形式との関係から読み解いた民画の発生と背景、および「文房図」の視覚表現形式に見られる視覚言語の解説とその構成方法の分析の二部構成となっている。「重ね合わせ」「遠近感」「比率操作」「視点の移動」などの造形操作言語を複数の「文房図」から読み出し、それらの言語を用いて詳細に「文房図」の視覚表現形式をダイアグラム化したものである。チェ君は、この分析手法によって他の民画と「文房図」との類似と差異を明確に示しながら、「文房図」に見られる独特な視覚表現形式の構成意図を解き明かすことに成功している。さらにこの分析手法は、「文房図」の視覚表現形式の分析だけに止まらず、表現そのものへと還元されていく可能性をも示唆しているてんも高く評価できる。ヴィジュアルコミュニケーションデザインの中心的な課題を扱った秀作である。