平面
和紙、岩絵具
2200×3600
元遊郭の古い旅館に、女とふとんを描きました。
時間を経て人の心や場所にたまっていく「澱」、のようなものに魅力を感じます。女の生きてきた人生をさまざまに想像しながら観ていただけたらと思います。
担当教員:山本 直彰
開かれた屏風の前でこの古い旅館の玄関に立たされる。そこには寝床を離れたばかりの歳を重ねた女性が坐っている。一方、正面の壁には未知の光が射し込んでいる。観音開きの形式をさらに透視図法で遠方へと導きながら、古びた日常が観る者の心理を逆撫でる。観る者に宿の入口を開けたことを後悔させるかのようだ。しかし、その意志に反して我々はこの宿に泊まることになるだろう。
椎名は、この数年取材している古宿と自分の母を女性の象徴として組み、褪せた色を淡く何度も塗り重ね、臭覚をも刺激してくるような不思議な作品を描きあげた。蒲団だけが生々しく横たわっていることにただのレトロ趣味をこえた絵画のプライドを見ることができる。