インスタレーション
麻ひも
可変
絵画の皮膚であるキャンバスを麻ひもで織ることから始まった
たて糸によこ糸をうえしたうえしたうえ…
わたしが消えてゆくような まるで祈るような作業
祈りを織りこむ
一本の長いひもが線でかたちをつくりだす
終わったら次のひもを結び またしたうえしたうえしたうえした
そのたびタマシイもむすばれてゆくのだろうか
この手で掬ってそそぎこむ
いつか解けてしまうこのかたちたちに
わたしやあなたが この山にその風にあの海に とけゆくひをゆめみて
担当教員:樺山 祐和
渡邊は人体の背中を手がかりにしながら、巨大な子宮やカブト蟹の甲羅のような対称性の強い生命的な形態を創りだした。それは植物繊維の紐を入念に掬ぶ(むすぶ)ことによって作られているが、依り代(神霊の寄りつくもの)とされる植物繊維は、掬ぶという身体の力によって、かた・ち(型+血、乳、地)を与えられ、名付けようのないデーモン的存在として生み出された。作品は生き物の表皮あるいは抜け殻を思わせるが、渡邊は元より表皮に対する強い興味を持ち作品化してきた。しかし真に求めているものは、表皮に包まれ見る事のできない血の通った温かい内部であり、体温によってつくられる特別な場、空間なのだろう。渡邊の行為は、大切な中身が流出し離ればなれにならないようにと掬ぶ、祈りのようにも見える。その中身が何であるのか、言葉にする事は難しい。しかし掬ぶ行為によって作られた作品の姿は希望と断念を抱えて在る。