立体、本
カンヴァス、針金、ヌメ革、アクリル、
カービング、その他
331×384、353×444、429×521
活字になる前の本のインディーズである文豪の直筆原稿は、書く行為の軌跡である直筆によって人間性や身体性を感じ取る事ができます。立体によって臨書する事で線の前後間の関係から文字の書き順や、筆者の息づかいをも感じられ、筆者が本文を書いた後にルビを振り、編集者が活字の号数指定などを書き込むといった時間の過程があるように、活字本が平面なのに対して直筆原稿の中には数多くの文字の層があり、空間が存在するのです。
担当教員:新島 実
直筆原稿の臨書という行為を通して作家の精神性を読み解こうと試みた作品である。直筆原稿の文字が醸し出す微妙な空間感を目と手の感触をたよりに、針金を曲げながら作家の書く行為の軌跡をたどっている。荒井さんが針金に込めた思いは間違いなくそれぞれの作家の内面を描き出そうとしたものに他ならないが、針金によって浮かび上がらせた精緻な文字の群れは同時に荒井さんの息づかいとなって起ち上がっている。デザインにおける伝達と自己表現の微妙な関係を、針金という不自由な材料を用いることによって乗り越え、作品を自立させている。作ることへの拘りが生んだ魅力的な作品だ。