武蔵野美術大学 造形学部卒業制作 大学院修了制作 優秀作品展

遊糸

黒川 萌 視覚伝達デザイン学科

立体、平面 
石粉粘土、油絵具 他 
5400×3200×3200(設置範囲)

移り変わる表情・感情がひとつの人間らしさなのではないかと考え、角度や光によって見える表情が変わる人形を作りました。動かないはずの物に動きを与えることによって、一瞬でも意志がある存在に感じられるようにという思いがあります。タイトルの「遊糸」とは、晩秋や早春の頃、空中に蜘蛛の糸が浮遊する現象のことで、あるかなきかのものに例えられるそうです。少女と女性の狭間の、複雑で曖昧で不安定な感情のイメージをこのタイトルにこめました。

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担当教員:寺山 祐策
何故に彼女がこれらの人形を作ろうとしたのか、率直に言って私には分からない。時には当の本人ですら精確に言葉化できない「何か」だってあるものだ。
ただ、今でなくては作れない繊細な何かを彼女が作ろうとしている事は、理解できたし、私はそれを見守って来た。
彼女の作り出す人形は美しい。しかし、それは人形そのものというよりも、光と状況によって千変万化するその表情にある。私たちはそこに悲哀、郷愁、憧憬、無垢、歓喜、悲嘆、慎み、驚きなどの微細な感情を読んでしまう。そこにあるのは既に単なるモノではない。しかし「生きている」とも異なる。物と生命の「あわい」にある、(多分それ故に)これらのイメージのなんと雄弁なことだろう。