インスタレーション
「編む」という行為をひも解くため、組ひも模様の装飾が特徴的な8世紀スコットランドの聖書写本『ケルズの書』のイニシャルをひもで立体再現しました。再現の過程はコマ撮り写真で記録し、ひもが形→文字→物語を編んでいくという流れを映像として編集しています。
編むという行為の基本は「関係をつくる」ということです。ひもと空間の関係が形をつくり、形と形の関係が意味をつくり、意味と意味との関係が物語をつくる。それを私は、編むという行為を通して私の手から教わったと思います。
担当教員:寺山 祐策
1本の紐が折れ曲がり交差し、文字ができるところから彼女の作品は始まる。その文字が集まって言葉が編まれる。それはラテン語で「最初にことばがあった(IN PRINCIPIO ERAT VERBUM)」と記されている。次にその13文字からランダムに無数とも思われる言葉が溢れ出す。アナグラムの世界。そしてそれらは再び1本の紐に、そして無に戻る。
「編集」が彼女のテーマであった。様々なリサーチと試作の後、彼女が導き出したキーコンセプトは「編むと解(ほど)く」であった。彼女は1本の紐の変化のみで、文字とは何か、ことばとは何か、編む(text)とは何かについて鮮烈に描ききっている。
ちなみに彼女がリサーチの過程で参照した「ケルズの書」は天使によって書かれた書物と言われている。