武蔵野美術大学 造形学部卒業制作 大学院修了制作 優秀作品展

古活字仮名の形態研究

廣澤 梓 視覚伝達デザイン学科

平面、タイプフェイスデザイン
パネル
1030×1456、1030×728

仮名文字の美しさは本木昌造がいわゆる築地体のために、文字を正方形に収めたことがはじまりであるというのが定説になっています。しかし、形が洗練される前の素地がそれ以前の時代にあったのではないか。現時点で手に入る、活字が自立している古活字版資料を50冊選び、文字の形をトレスして正方形に再配置し、並べることで、変化を観察しました。また、それらの文字を今日的視点から修正、標準化したかな書体を制作しました。

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担当教員:寺山 祐策
彼女のかな文字研究・制作の特筆すべき点は以下の3点である。
1:16世紀末から19世紀にかけて作られた木活字のかなをこれだけの数収集、アウトライン化し、一定の基準で比較検討した事例がこれまでにないこと。
2:その基準においてあえて明治以降の金属活字の正方形グリッドの適用を試みたこと。
3:それらから美しくバランスの良い形を抽出し、独自のかなフォントを制作したこと。
これらから何が導き出されたか。詳細は省くが、特に正方形に再配置することで江戸初期に作られた木活字のかなと明治以降に作られたかなとが、従来言われて来たことと異なり、骨格として極めて親近性があるという実証的な発見である。これは今後の日本語のタイポグラフィ研究にとって重要なことであり、学部生としては大変高度な仮説推論に基づいた研究制作である。