立体
石、紙、石彫、拓本、軸装
350×350×40、1000×400
私は中国書作品に合う仮名のデザインを制作のテーマとした。題材は褚遂良の楷書千字文という石刻作品である。文字は長い歴史の中でその姿を様々に変化させてきた。骨、石、紙、文字を記すための素材は字形や線質に影響を与える。また、書家の筆、彫刻家の鑿、拓本という流れの中でも何かしらの変化があるだろう。そのため、書きぶりをまねるだけでなく同じ媒体で表現してこそ意味があると思い、制作した仮名を石に刻すことを試みた。
担当教員:新島 実
本多さんは個人的に私淑する、中国唐代の書家、褚遂良(596-658)の楷書に合う仮名書体のデザインを試みた。筆によって書かれた文字には必然的に字形にノイズが生じるが、本多さんの仮名はこのノイズを強調することによって、褚遂良の文字との融合を計っている。この方法は仮名デザインの新しい方向性を示唆しており興味深い。そして制作された仮名はフォント化には向かわず石に彫り戻し、拓本をとって軸装しその仕上がりの良さを見せてくれている。また文字を書くだけでなく、文字を作り、刻し、刷り、束ねるといった一連の文字とのやり取りを、「石刻における文字表現」と題した書物にまとめている。柔らかな表情を持った美しい書物である。