映像 - 33min
屠殺場、屠場、食肉センター、名前が変わり技術が進歩しても、暖かい動物たちが運ばれてくるのなら、そこにある思いは変わらずにあるのだと思います。流れる血や糞尿、肉に囲まれながら歴史や差別と向き合う人がいます。そこで働く方々の思いは様々ですが、限りある時間の中で、愛を頼りに、哀しみも喜びも背負って働く名もない屠夫が、その家族が、今日もどこかにいるのだと思っています。
担当教員:板屋緑
屠場の資料は数多く存在するが、実際の取材や撮影は極めて困難である。加えて、そこには部落問題や命を食べる問題等が横たわっている。そのような状況で、久保田は新たにインタビューが取れる度に、または、撮影の許可が下りる度に、ドキュメンタリーの構造を変化させ、成長させている。そのためには、自分の立ち位置すら微妙にずらすことをいとわない。ドキュメンタリーにおける主体の作用を認識しているからだ。テーマさえも「愛する人、守りたい人のために克服されるべき差別」へとずらしていく。久保田のこのしなやかさで制作されたドキュメンタリーは、清らかで、気高い。